その手から感じること

嗚呼、この手だ・・・!
ホームページに映し出された ” 包丁を持つ手 “には、確かに見覚えがあった。霜焼けしたように赤く、普通の人の2倍はあろうかという太い指、パツンと腫れ上がったその手は、まぎれもなくマスターの手だ。

学生時代、金源ビルの厨房でアルバイトをしていた私は、マスターの腫れた手を見て驚いた。何十年もの間、厨房に立ち、何をも厭わず水仕事をしてきた ” 料理人の証 ” だという。しかもその手はただ大きいだけではない。人参に飾り包丁を入れ、餃子の大きさもヒダもすべて同じに包む、器用で繊細な手でもあるのだ。「野球ミットのようですね!」などと失礼なことをいう私に、「そうだ!売ってる手袋が入らねえんだぞ!」と言って大きく笑うマスターと、それを笑って見守る奥さんの顔は何だかとても誇らしげであった。

福島を離れて25年、大学生だった私も今では子育てに追われる ” おばさん ” である(笑)。その長き間、マスターと奥さんは来る日も来る日も料理に向かい、御歳は召しても(失礼!)変わらぬ料理人の誇りをもって王芳を守ってきたことを、その手が物語ってるように思う。マスターと奥さんの「無言のメッセージ」に、私は胸が熱くなった。

あの味と二人の笑顔に会いに、また王芳に行ってみよう。

k・k