ようこそ!近所の北京料理店へ

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つぎの角を曲がるまでが勝負だ。

片(ペン)切りや、絲(スー)切りされた食材が、小気味よく俎をはねる。その様子が頭に浮かぶ。そばにしようか、丼か?いやいや、餃子に炒飯も、山椒の効いたあれだって、食べたいものはいくらでもある。そのときの腹具合を考えて歩くと、目指す店はすぐ目の前。

「ぃらっしゃい!」抑揚の効いた声が響く。ジャングィ(親方)の出迎えで、食欲はさらにそそられる。注文を受けてから包まれる餃子。ここの常連は、「餃子(ぎょうず)」と発音する。さぁ、一体どれにする?『焼き・水・揚げ・蒸し』4種ある餃子は、そのどれもが同じタネなのか?そう思うほど、4種それぞれに味わいが異なるから、迷ってしまう。

鼻先を過ぎる香ばしい油の香り、スープと餡が見事に調和したおそば!鍋をおたまで叩く、甲高い音ったら! あれだけ考え抜いて決めたメニューが、カウンターに座ると一変してしまう。

「カーーーーンっ」
注文を決めたら、さぁ王芳劇場のはじまり。一人何役?というほどの、ジャングィの一切無駄のない動き。その包丁捌きと、段取り。それをサポートする女将さんは、注文から配膳に加え、洗い物やら会計まで全てを、完璧に一人でこなす。拝観料を払いたいね、このカウンター席には。

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配膳されたのは、水餃子。おっと、味付けはしてあるから、そのままを食べてみて。足りないときは、テーブルにある調味料を使えばいい。 あつあつほふほふを、一番うまい状態で頬張るのが、ここの流儀だもの。熱いものは、熱いうちにってね。

ご馳走さま。

角を曲がった帰り道、考えることはひとつだけ。
「つぎはなにを食べようか。」
曲がり角が勝負だ。

PICK-UP/ 田中 栄